子ども同士で遊んでいると、こんな光景をよくみます。
ふたりの子どもがなにやら険悪な雰囲気。ケンくんはオモチャを胸にしっかりと抱きしめたままムッとした表情。エリちゃんはそのオモチャをみつめたまま唇をかみしめ、目は真っ赤。いまにも泣き出しそう。これはトラブル発生寸前。こういうときでも、しばらくようすをみてほしいのですが、場合によってはオトナが「仲立ち」してあげます。まずは、ふたりの言い分をよく聞くことから。
エリちゃんが泣きそうな表情だからといって、「ケンくん、なにイジメてんのっ」と怒るのは禁物です。ケンくんのオモチャにエリちゃんが関心をもち、遊んでみたいのに拒絶されたのか、それともオモチャはエリちゃんのもので、ケンくんが貸してもらってるのに返してあげないのか、などなど。ふたりのことばによく耳をかたむけることが原則です。
「それ、ケンくんのオモチャ? かっこいいね~。 エリちゃんは元気ないね。どうしたの?」
「そっか~。 エリちゃんは、ケンくんのオモチャで遊びたかったんだね。かっこいいもんね。ケンくん、エリちゃんが貸してほしいっていってるよ、どうする?」
ケンくんは、それでも「イヤ」というかもしれません。そこで、エリちゃんがついに泣き出したとしましょう。そこでも「なに、泣かしてんのっ!」と、ケンくんをしかりつけるのはガマン、ガマン。ケンくんも、エリちゃんの涙からなにかを感じとっているはずです。自分の意見をとおそうとすることで、他人を傷つけてしまうこともある、と学んでいるはずなのです。
そんなケンくんには、「エリちゃんはね、これであそんでみたいって。1回でいいから貸してあげない?」とやさしく口添えしてみましょう。そのうちケンくんだって「貸してあげてもいいな」という気持ちになるかもしれません。それでエリちゃんが笑顔になれば、そこからケンくんは「自分の行動ひとつで、他人を泣き顔にも笑い顔にもさせることができる」ということを学習します。子どもは場合によっては、ゆずりあうことの大切さを学びます。オトナは、双方の言い分をよくきき相手に伝えてあげて、仲立ちをする。けっして裁判官にならない、行司になる、これが子どものトラブルに関する原則といえるでしょう。
汐見先生の素敵な子育て「子どものコミュニケーション力の基本は共感です」
認定こども園せいれんじ