幼保連携型 認定こども園 せいれんじ

お知らせ INFORMATION

「がんばって!」「がんばらなくていいのよ」 ー上手に使い分けるコツ

 運動会やスポーツ競技、ゲーム感覚で楽しめるものなどで、「がんばって!」と応援するのは、もちろん問題ありません。
 エールを送るつもりで「がんばって!」と声をかけるのも相手をリラックスさせることにつながるでしょう。「応援しているよ」「あなたの味方よ」という意思が伝われば、相手も心強く感じるかもしれません。
 ただし、この言葉がプレッシャーを与えることになってはいけません。子どもは未来のためにいまを犠牲にできません。いまがおもしろくなければなにごとも受け入れないのです。ムリなトレーニングは、快の感情を伴っていませんから、本当には身につかないのですが、それをムリして続けることで、その子の個性や潜んでいる意外な才能さえ、つぶしてしまう危険性があります。

 日本人はこれまで、『追いつけ、追い越せ』で社会をつくり、経済大国へ突き進んできました。そのために、苦しくとも辛抱し、がまんしてきました。将来のために、です。これを象徴的に表す言葉が「がんばる」です。
「がんばる」は、もともとは仏教用語で「我を張る」という言葉だったといわれています。江戸時代までは、否定的な意味合いで用いられました。「我を張ってはいけない」「我執にとらわれてはいけない」というのが仏教の基本。「我を張る」→ 「がんばる」のは、教えに背くことになるからです。
 ところが明治になり、西洋に追いつけ、追い越せ、そのためには多少のムリをしなければダメだ、臥薪嘗胆(かたきを討つために苦労を重ねること、目的をとげるために努力を重ねること)、耐えねばダメだというのが社会の共通の目標になりました。そこから「がんばる」が+イメージの言葉に転化したといわれています。

 とにかく耐えなければならない。がまんしなければならない。そのためには「我を張って」でも何でもいい。とにかく、成し遂げなければならない。ムリをしてでもやるんだ。そうすればあとで報われる。
 ムリをしていると、本当はどこかに破たんがくるものです。でもそれがいいことだと思っていると、いつしかそれに気がつかなくなります。からだが発している「休もうよ」というサインを聞くことが出来なくなっていくのです。
 ですから、「がんばる」のはよほどのときだけで、ふだんは「がんばってはいけない」というのが人間のメンタルヘルスの維持には大事なのです。

 日本は特殊な近代化の道を歩んだおかげで、がんばることは無条件にいいことだと、思いこんできたのです。
 子どもがムリをしているなあと感じたら、
「いつもの感じでいこうよ!」と声をかけてあげましょう。
 大きくて、やさしい視線をもちたいものです。

◯ 「リラックス、リラックス」
  「そんなにがんあらなくてもいいのよ」
  「いつもの感じでいこうよ!」

✕ 「根性ないな」
  「何よ、ヘナヘナしちゃって」

汐見稔幸 この「言葉がけ」が子どもを伸ばす!